往診を始めて想うこと
     

   つい1年前まで私は"消化器外科医"として病院勤務をしていました。 その頃は『末期癌』と呼ばれた患者さんが外科の病棟に入院されると、患者さんは外科的治療の対象となるか どううかが問題となり『なすすべ』がないと分かると2通りの対応がなされました。『外科的治療対象外』の為、 早く他の病院に転院して頂くか又は余命幾ばくもないので自宅でできるだけ好きなことをして頑張ってもら うか・・・と言ったものでした。病院ででしか患者さんを診たことが無かった時には"好きなことをして頑張る" とは聞こえが良いのですが、どの位家で頑張らなければならないかが実感として全く分かりませんでした。

 ところが『田村クリニック』に勤務し始めて『末期癌』と言われてしまった患者さんの自宅にお邪魔させて頂く と、十分な病気に対するサポートが無いまま患者さんが無理やりがんばらされているような状況がままあることが 分かり、勤務医時代には随分患者さんに悪いことをしてしまったなぁ〜と、自責の念にかられています。

 なすすべが無いから『末期』というのは、あくまでも医療サイドの都合で患者さんを分類しているに過ぎず、 まだ他に患者さんにやってあげられることはないものか・・・と手探りで往診を続けています。いわゆる『現代医療』 に弾き出された患者さんはホスピス対応になるか、又は自宅で最期を向かえるかの選択肢しか用意されていません。 もっと他の選択肢があっても良いのではないかと思います。

 最近の研究では、『抗癌免疫作用と神経・内分泌環境』とが巧みにリンクしているという報告もあり、 実際の症例報告でも精神ケアを行うことで、癌の状況が改善したというものも出てきています。『末期癌』と 言われてしまってもあくまで『現代医療』ではの話ですから、患者さんが精神的まで『末期』にならないように お家の方やケアスタッフと一緒になりながら、患者さんがより良い人生を送って頂く為のお役に立てればと思う この頃です。

平成15年12月

 


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