胸痛 その4〜肺塞栓
     
 

今回は「肺塞栓(はいそくせん)」という病気についてご説明します。肺塞栓は肺動脈という血管に血の塊(血栓)が 詰まることによって起こります。血栓は足の静脈にできることが多く(「深部静脈血栓症」)、それが静脈から剥がれると、 下大静脈→心臓→肺動脈と血液の流れに沿って移動して、最終的に肺動脈を塞ぐことになります。肺動脈がつまると 血液に十分な酸素を取り込めなくなります。

 症状としては突然に始まる息苦しさ、胸痛などです。小さい血栓の場合は肺動脈の小さい枝の血管がつまるだけなので、 症状は軽い胸の痛みだけで、自然に血栓が溶けて症状が消えることもあります。大きい血栓が肺動脈の太い部分を閉塞する と、呼吸困難症状だけでなく、ショック状態になり、意識障害など重症化する可能性があります。

 深部静脈血栓症の原因として身近なものとしては、いわゆる「エコノミークラス症候群」があります。これは長時間同じ 姿勢で座っていることにより、足の血液の流れが悪くなって、そこに血栓が生じる状態です。これは飛行機の エコノミークラスに限らず、長時間のドライブなど、血流が滞りやすい状態が続くと発生します。立ち上がって歩き始めると、 足の静脈にできた血栓が剥がれて、肺塞栓を起こします。その他にも、膝などの手術後、カテーテル検査後、外傷後などに 起こる場合や、生まれつき血栓ができやすい状態が原因となることもあります。

 肺塞栓の診断には、心電図、血液ガス検査、心臓超音波検査などを行った上で、造影CTスキャン、核医学検査、肺血管造影 などの精密検査を行います。肺塞栓を起こした場合、入院治療が必要です。治療は、血栓を溶かす薬(血栓溶解療法)や血栓を 予防する薬(抗凝固療法)で治療を行います。重症の肺塞栓でショック状態の場合は、体外ポンプによる呼吸循環補助や、 カテーテルまたは手術による血栓除去を行うこともあります。

 肺塞栓の再発予防のためには、ワーファリンという抗凝固薬を使用します。再発する場合には、血栓が肺動脈に流れないように するためのフィルターを下大静脈に留置することもあります。肺塞栓は年齢・性別を問わず、誰にでも起こりうる疾患で、 生命にかかわることもありえます。飛行機・ドライブ等の時には長時間の座った姿勢を避けるようにしてください。

平成16年5月

 


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