インフルエンザの最近の知見
     
 
 田村クリニックで小児科を担当する中村です。これから数回は小児科に関連するお話をお届けします。

 第一回は、今年もまたインフルエンザの季節が目の前にやってきましたので、小児インフルエンザの最近の知見を簡単に説明しましょう。

 「インフルエンザが子供達にとって怖い存在」と思われるようになったのは多分、脳炎または脳症を起こして死亡する報道を耳にしたことがきっかけであった方が大半でしょう。

 百年も昔のことを掘り出してきてもピンと来ないかもしれませんが、「スペイン風邪」と聞いて思い浮かぶ方は何人いますか?第一次世界大戦末期の1918年にスペインのマドリードからヨーロッパ各地へ広がったA型インフルエンザは、6億人の罹患者と2500万人の死者を出し、日本でも国民の半分が罹患して40万人が死亡したのです。その当時はなす術もなく、その正体がインフルエンザウイルスであることも分かりませんでしたし、ケタ違いの数字に圧倒されますね。

 さて現代医療の発展の中、日本における最近の状況をお話しします。死亡原因のほとんどが脳炎、脳症であるので(実は、肺炎などが死因になることは極めて稀なのです)、これにしぼった統計を見てみましょう。平成11、12、13年度のインフルエンザ脳炎、脳症による死亡数は各々(カッコ内は死亡率)、61例(31%)、27例(30%)、9例(14%)と昨シーズンは例年に比してぐっと予後の改善をみました。

 しかし、1977年以降大流行のないことから、今年が昨年以上に良い結果になるであろうと楽観視は出来ません。そこで、ご家庭でのインフルエンザ対策の一考を掲げてみます。まず第一は予防です。不規則な生活を脱して体調を整え免疫力を保持しましょう。外からの帰宅時は家族みんなで手洗い、うがいを励行すること。インフルエンザワクチン接種も有効でしょう。しかし、どのワクチンにも言えることですが、接種すれば必ずOKとは限りません。数%は接種したにも関わらず免疫がつかない場合があります。よって、自分だけは大丈夫と高をくくらず先述の予防をしましょう。

 最近は治療薬の開発が進み、小児に対しても複数薬剤の有効性が全国レベルで検討され、今月札幌での小児感染症学会で報告される予定です。次回はこの辺を踏まえてインフルエンザの周辺をもう少し考えてみたいと思います。

平成14年11月

 


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