続インフルエンザのお話
     
 
 インフルエンザウイルスによる脳炎、脳症の生じる原因は解明されていませんが、ほぼ次のようなことであろうと考えられます。ウイルスの浸入がきっかけとなるものの、ウイルス自体が脳細胞を傷みつけるのではなく、侵入を察知した患者自体の拒否反応が脳炎、脳症へ導くものです。幾種類ものサイトカインと呼ばれる体内物質が自己防衛を司る細胞から分泌され、脳血管を構築する細胞にダメージを与え、その結果脳浮腫、ひいては脳内出血につながり、脳細胞の死に至ることもあるのです。しかもこの現象は、発症後加速度的に進行するので、いかに初期に処置をするかが予後の鍵となります。

 ウイルスは自ら分裂して増殖することが出来ません。ヒト細胞の表面にくっつき、侵入してヒト細胞を利用して増殖するのです。インフルエンザに対する抗ウイルス剤は、ウイルスがヒトの細胞に侵入する際を妨害するか、ヒト細胞の中で増殖して外に出て来るところを妨害するものです。発症後48時間以内に内服しないと効きが悪いのは、一度ウイルスが侵入し、再度増殖してヒトの細胞から出てしまう(感染後2〜3日らしい)と追い付かなくなるために言われることなのです。タイミングが難しいですね。これまで使用してきたA型のみに効く薬に加え、今年はA、B両方に効く薬がドライシロップでも入手可能(現在は添加物の調整で入荷が遅れている)となります。

 インフルエンザの迅速検査をこの時期希望される御両親が多くなりますが、検査精度に関して一寸一言。当クリニックにおいても迅速診断が可能で、短時間でかつ高精度の測定キットを使用しています。綿棒で鼻の奥を拭った検体での検査感度は約80%(インフルエンザの患者が10人いると、そのうち2人は陰性となり見逃す)、特異度は約95%(インフルエンザでない人を100人検査すると、そのうち5人は陽性と診断されてしまう)とされています。つまり、検査の結果が全てではなく、きちんと経過、症状を医師に問診で伝え、十分診察した際の補助として検査結果を考慮してもらうことが重要であることを明記しておきます。

 先月札幌で開催された小児感染症学会においてもインフルエンザに関する検討が多くなされました。日本はインフルエンザの診断、治療において世界のトップになったようです。加えて、インフルエンザ対策の基本はワクチン接種(予防接種)による集団免疫効果であることを最後に明記しておきます。

平成14年12月

 


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