咳に関する考察−その2−
     
 
 前回は、感染徴候がない持続する咳に関してのお話をしました。今回は感染性の咳に関する最近の話題を取り上げます。

 病原体は、ウイルス群と細菌及び真菌群に大きく分けられます。前者は現在流行中のインフルエンザウイルスや夏風邪で問題になるコクサッキーウイルス、アデノウイルスなどで、これらのウイルス群には抗生剤は無効です。もちろん後者には抗生剤が有効です。ただ、外来での問診及び診察一回のみでは、両者の区別は難しいことがしばしばです。

 さらにもう一つ、小児にとって重要な病原体があります。それはマイコプラズマとクラミジアです。前者は、以前オリンピックの年毎に流行るので「オリンピック病」と言われたこともありますが、現在は通年性とされています。後者は名前から性病(STD)でないのか?と懸念されるかもしれませんが、肺炎クラミジアといってSTDとは異なります。従来は学童期における肺炎、気管支炎の起因菌として注目されていましたが、最近では小児上気道感染症の最大50%がこれら二者によるという報告すらあるのです。そして就学前の児においても高率に認められることが注目されています。

 さらに注目されることは気管支炎、肺炎といった下気道感染症における喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒューと呼吸する際に聞こえるもの)を合併する率がこれらの感染時に高いことです。これらによる下気道感染症と診断された児の30%強が喘鳴を伴うと報告されました。また、喘息と診断されている児の約半数にこれらの急性及び慢性持続性感染があるという先生もいます。

 よって、前回この場でお話しした元気なのに咳が持続する子どもの何人かはマイコプラズマやクラミジア感染の可能性もあり、気管支拡張剤や抗アレルギー剤ではなかなか完治しない場合は、抗生剤の投与を考慮する場合もあります。抗生剤の種類に関しては、マクロライド系の薬が最も良くかつこれのみと考えて良いでしょう。残念ながらこれらの内服薬は、子どもにとって一回服用量が多かったり、味が苦かったり(大人ですら顔をしかめたくなります!)して飲み難いのが特徴です。内服の仕方は、予め医師に相談してアドバイスを頂きましょう。

 何故これらの病原菌により喘鳴が生じるか?については、炎症性サイトカイン系のインターロイキン5という物質が感染により血液中に著増するため、喘息の際にも問題となる白血球中のアレルギー反応を担当する好酸球を活性化させ、気管、気管支の炎症及び過敏性亢進を引き起こすことが原因の一つであろうとされています。

平成15年2月

 


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