小児の嘔吐と下痢 〜症状に対する考え方
     
 

これまでに小児でよく遭遇する症状の咳きと発熱をお話させて頂きました。今回は消化器症状としての嘔吐と下痢をお話しましょう。

 咳が喉についた菌を除去しようとする生体防御反応とすると、鼻水は鼻腔内に侵入した菌を包み込み、くしゃみはそれを外へ弾き飛ばす、痰も同様に包んで咳きと共に外へ出すという防御反応と考えられます。生体防御という面では、嘔吐は胃に侵入した菌を外へ排泄する、下痢はいわば「腸の鼻水」の様なものとも考えられます。消化器症状は胃腸自体の感染以外、例えば腸重積、腸捻転、幽門狭窄、虫垂炎、髄膜炎など、小児の病気だけでも沢山ありますが、今回は感染性胃腸炎の際の消化器症状に限ってお話します。今列挙した病気は嘔吐や下痢以外にそれぞれ重要な症状(しかも、御両親が何か変だぞ!と直感できる症状:高熱、顔色不良、かなりの腹痛、血便など)があるので、お家で見過ごすことはないと思います。むしろ、医者の方が「風邪」と即断して治療に遅れがないようにしなければなりません。ただし、お腹の病気程難しいものはないと今も昔も私は思います。

 どのような症状にしても、対処法の極意は「その症状の出た原因を早急に判断し、症状を軽減する方法を考える」ことにあります。嘔吐、下痢いずれも菌を排除しようとする生体防御反応であるが故に、それらをゼロに無理矢理するのは頂けません(発熱の項でも同様のことをお話しました)。つまり、口と尻に栓をすることは、お腹のなかで菌を密閉し暴れさせるさせることにもなりかねません。ある程度は吐いても、下痢しても良いのです。その結果、発生する脱水症に陥ることがなければ。
 お母様方がよく心配する中に、さっきまで元気だった子供が突然吐き出すといったことがあります。嘔吐した直後は、大人でも吐き気に伴って顔色が青白く、ロウ様に色が抜けたりして、いかにも調子悪気になります。でも、ちょっと考えると今まで元気だった訳ですから、体の余力(栄養分、水分)は、半日くらい家での生活は可能であるはずです。子供が何を吐いたか?(不消化物であればいつ食べた物が出たか?その他に混じっていないか:血液、胆汁など)。吐いた後子供はスッキリしたのか?まだゲロゲロしそうか?など、よく観察して下さい。
 余談ですが、季節の変わり目などのゼロゼロする子供達は気管支に溜った痰が込み上げて来る際に吐き気を催し、多量の痰を吐く事ですっきりします。これは真の消化気症状と区別しなければなりません。

 嘔吐、下痢が生じている際、余計な仕事をお腹に科すことを避けるべきです。お腹をそっとしておくには、消化吸収を強いるような固形物を一時中断し、水分のみすることです。水分の理想は乳幼児用のイオン飲料水です。大人用のスポーツドリンク系は正しく健常スポーツ時のエネルギー補充用であり、嘔吐や下痢用にまで考えて作られていません。乳児用の特徴は電解質量が糖質量より重点が置かれていることです(物にもよりますが、スポーツドリンクに比し電解質は2倍、糖質は半分くらいと記憶しましょう)。よって、スポーツドリンクのお湯割りもいけないわけではありませんが、さらに電解質量が減少します。乳児用は病院でする点滴の内容に酷似します。もちろん、夜中に調子の悪い子を置いてコンビニに走るより、白湯(湯冷まし)でも水分補給になりますので、これはあくまでも理想ですから。
 ただ、幼少であれば、元気がなく、十分水分摂取が出来ず、尿量の減少(回数はあまり変わらなくても、濡れるおむつの重量が重要)のいずれかがあれば、家でのみ頑張らせることなく小児科医に相談して下さい。

平成15年5月
 

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