家庭で遭遇する小児の発疹について(1)
     
 

 ゴールデンウイークの前後から急に暑くなったかと思ったら、続いて雨に見舞われ再度涼しくなったためでしょう、 ノドを中心とした感染症がここ多摩地区は流行し、園によっては学級閉鎖を強いられた施設もあったようです。 加えて、当院内科では成人の溶連菌感染症が目立っており、家族内発症も少なくありません。溶連菌感染は発熱、 咽頭痛、そして発疹の3主徴が有名ですが、咽頭痛のみの患者も少なくありません。

 今回は、小児の発疹について溶連菌をも含めて実際にお家で遭遇する疾患を考え、これまでと同様に確認しておきたい ことを中心にお話しようと思います(病気の概説ではないのでご了承下さい)。

 まず、突発性発疹についてお話します。突発性発疹をお母さん方に「突発性発疹もノドカゼの一種ですから」と説明すると、 「そうだったのですか?」とちょっと意外な感を持たれることによく遭遇します。紛れもなく突発性発疹は感染症であり、 その病原体も有名なヘルペス科のウイルスです。

 ヘルペスウイルスは人を自然宿主とするものだけで現在8種類同定されており、つい最近1986年に発見された ヒトヘルペスウイルス6と命名されたウイルスが突発性発疹を発生することが判明しました。それに少し遅れること1990年に ヘルペスウイルス7が発見され、これも突発性発疹様の発熱および発疹症であることが分かりました。この突発性発疹の研究は 日本がトップクラスなのです。

 育児書などで紹介される内容は、『生後6ヶ月以降1歳位で、当然の発熱とそれ以外に特に症状なく、機嫌もあまり 損なわれない場合、特に発熱が初めてとなるとこの突発性発疹である確率が高い』というもの。しかし、兄弟からカゼが うつることや、母子免疫が効いている頃でも母がカゼをひき、それがうつる場合などがあるので、時期からとか、臨床症状 からでは単なる予想に過ぎません。

 また、早期臨床診断として咽頭所見が注目されていますが、陽性一致率は6割強とそれ程高くはありません。最近マレーシア の先生からある咽頭所見が陽性一致率が100%と驚異的な診断有用性の報告がありましたが、日本での追試はまだのようです。

 ところで、本症状の発疹の特徴は、解熱(これを「かいねつ」と読んではいけません!)に伴い認められることです。 発熱時から発疹が生じる疾患は沢山ありますが、本症状のように発疹が解熱時に発現する病気は突発疹が唯一と思って良い でしょう。しかし、そのメカニズムは不祥なのです。また、突発性発疹の発熱も熱には変わりないので、熱性痙攣を合併する のは他の有熱性疾患と差はありません。

 次は水痘について。ここ多摩地区では、年末より増減はありますが流行は衰えていません。5月の半ば過ぎより更なる 増加傾向があるようです。これもヘルペスウイルスの感染によるものです。有名な病気なので、ここでは確認すべき事項に ついてお話します。

 潜伏期は約2週間くらいあるので、発病した際には2週間そこから溯って感染源を割り出します。そして、ここ2週間で 接したお友達にはお互い様なので、発症の可能性を教えて上げましょう。

 発症した場合、全部の発疹が痂皮化(かさぶた様に紫色に変色する)するまで、感染能力があります。発症後の治療には アシクロビルという抗ウイルス剤の内服とフェノール亜鉛華リニメントという石膏様の外用薬があります。痒さでたまらない 場合は痒み止めの内服薬を服用します。

 今年の傾向は、水疱が巨大化して化膿する難治例が少なくないという全国的な情報がありますが、当院へはお母様方が初期に 受診されることもあり、重症化する児は今の所ほとんどありません。

 予防法としてワクチン摂取があります。水痘罹患児に接した直後(約48時間以内)にワクチンを接種し、潜伏期のうちに 何とか水痘免疫を獲得して発症を食い止める作戦です。しかし、園や学校で同時期に複数の発症があると、接種のタイミングが 遅れることもあり、完全な予防希望と言われると難しい方法です。また、水痘の抗体が特別多く入った(水痘高力価といいます) 免疫グロブリン製剤の注射は、合併症のある免疫的に弱い児の発症予防に使用されることがあります。

平成15年6月

 


ページを閉じる