家庭で遭遇する小児の発疹症(その2)
     
 

 前回では、突発性発疹と水痘(水疱瘡:みずぼうそう)を取り上げました。小児期の発疹は感染症に伴って 生じることが多く、かつ他人に感染する時期に出現するものがほとんどです。ただし、突発性発疹は例外でした。 今回は、伝染性膿痂疹(とびひ)、溶連菌感染症、伝染性紅斑(リンゴ病)、そして超有名な麻疹(はしか)、 風疹(3日はしか)についてお話します。

 伝染性膿痂疹(とびひ)も良く遭遇する発疹です。水疱を形成するのは水痘同様ですが、とびひの水疱は細菌の 出す毒素が表皮を溶かすので、すぐ表皮が崩れてジクジクします。カゼで鼻水が出て、鼻の下(人中と言います) のかぶれた所に出現したりします。もともと湿疹やアトピーで痒くなった箇所を掻きくずして、指についていた菌が そこに繁殖するので、手の届く所が発端となることもあります。これからの時期に多くなる病気です。水痘の水疱に 比して、とびひの水疱は平坦かつ自分でジクジクしてきます。極初期には赤い小さな発疹のみで両者を鑑別すること が困難な場合があります。抗生剤の軟膏、内服で迅速に治療します。

 溶連菌感染症の際にも発疹を認めます。溶連菌感染の特徴は咽頭痛、発熱、発疹が主症状ですが、必ずしも全てを 認めなくても罹患している場合があるので注意を要します。溶連菌の発疹は体幹を中心に直径約0.5-1mm程度の細かい ブツブツです。痒味を伴うこともあります。発疹だけの場合でも咽頭所見をとると独特な咽頭発赤があるので診断は 比較的容易です。ただし、溶連菌感染の場合はリウマチ熱や急性腎炎の合併症発症予防に抗生物質を二週間近く内服を 余儀無くされるので治療には我慢が必要です。

 伝染性紅斑(リンゴ病)、両方のほっぺがリンゴの様に赤々することから呼ばれます。これもヒトパルボウイルスB19 というウイルスによる感染症であることが判明しています。リンゴほっぺ状態になった後、1両日には四肢にレース状の あみあみ模様の紅斑が出現します。この発疹の特徴で診断は容易です。発疹が出現したころには、最早感染性はなく なっているので、出場停止の義務はありません。日光刺激や、入浴や運動などの温熱刺激で発疹の退縮が長引くことが あるので注意が必要です。妊娠可能な女性での本疾患の免疫(抗体)保有率は30%程度と言われているので、流行時には 妊婦さんは接触を避けるべきです(最悪、胎児に感染して流産の危険もあるものですから)。

 麻疹は、予防接種が普及して大流行には至らなくなりましたが、逆に予防接種が出来ない(実際は接種可能ですが、 自費扱いになります)1歳未満の児が問題です。2-3日はカゼかな?と思っていると一度解熱したかに見えて、のち ド−ンと高熱(これを二峰性の熱と言います)を発すると同時に全身に発疹が出ます。コプリック斑という麻疹特有の 口腔内所見がありますが、発疹の初期を過ぎると認め難くなります。「麻疹の熱は冷やすな」という言葉を御存知 でしょうか?これは迷信です。いかなる時でも、高熱で児が苦しんでれば少しでも快適にする手段を功じるべきです。 発疹は4-5日すると赤色から褐色の色素沈着となり解熱も確認できるようになり、そうなればお友達と接することが 許されます。最近は、予防接種をしたにも拘わらず、周囲での麻疹発症の環境に接しないで過ごすため、抗体が低下 していることが問題となっています。特に妊娠中に予防接種をしたのに麻疹を発症することがあります(麻疹に罹患歴の ある人はしっかり抗体があるので心配要りません)。麻疹の予後はこの所お騒がせのSARS(サーズ:重症呼吸窮迫症候群) 程ではないとしても、既知の感染症の中では最重症の部類であり、発症は避けたいものです。水痘の項でお話したような、 免疫グロブリン(麻疹高力価の血清)を接触後4-5日以内に接種すると発症が予防、ないし軽減されます。

 風疹は、3日はしかと言われるよるに麻疹の軽症版であり、それ程重篤ではありません。妊娠初期の女性に接する機会を なくしましょう。妊娠初期は心臓、耳、目など器官形成の時期にあたり、風疹ウイルスはそこを障害するので、心臓病、 難聴、白内障などを引き起こす可能性があるのです。発疹は麻疹に比べると一個一個が癒合する傾向が低く、色素沈着には 至りません。それ程多くはないのですが、数週間後に血小板減少が生じて、出血斑を認めることがあります。一般に発疹は 指でぐっと押さえてさっと離すと、赤色斑は一旦消失します。出血斑は皮下に出血したものを見ているので、押しても消失 しないので、両者の鑑別に圧迫法は簡便かつ便利です。

 これまでに、「発熱」「咳」「下痢、嘔吐」「発疹」と外来を受診する主訴の中で頻度が高いもの連載しました。御両親の 育児に少しでも、不安を取り除けたら幸いです。次回からの企画を乞う御期待!

平成15年7月

 


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