熱性痙攣について
     
 

 発熱に関する確認事項は既にこのもしもし新聞でお話しましたが、その際にも登場した「熱性痙攣」については 簡単に済ませていたので、今回も疾患の肝をお伝えしようと思います。

 熱性痙攣とは、痙攣で発熱するというものではなく、発熱する何らかの原因による結果として痙攣する状態を言 います。つまり、発熱する原因が他にあるのでそちらは診断して解決するべきものです。

 次に、発熱すると子供は皆痙攣をする危険ないし確率があるか?答えはNoです。現時点では熱性痙攣の原因解明 はされていませんが、家族性(両親やその兄弟などに同様な症状があった者がいること)が多いことは分かってき ましたが、一部で遺伝的に解析がなされたのみです。よって、Aさんのお子さんが40℃の発熱で受診して頂いた際 に「先生、これからひきつけませんか?」という質問にYesともNoとも的確には答えられないのです。

 ひきつけ(痙攣)を目撃した方なら分かると思いますが、初めての時はかなり驚き、次にどうしたら良いかに戸惑 うはずです。身体全体が硬直し、ピクピクしたり、泡を口から流したり、時にはあまりの浅い呼吸と唇が紫色(チア ノーゼ)になるので、救急車を呼ばれるのも無理ないと思います。痙攣が止むまでには、数十秒から数分である場合 が多いのですが、その時だけ時間が止まったようにやけに長く感じられます。救急車で来院した際にも痙攣が持続し ていることは極めて稀です(これを痙攣重積状態と表現します)。

 ひきつけた際の対処:まず、命に関わることではないので、慌てないこと。隣でピクピクする子を乗せて、車を運転 して病院に駆け付けても、運転の方が危険です。まず、どんな調子か観察して下さい。

 昔からの言い伝えで、箸を口に入れて舌を噛まないようにすることを聞いた方はいらっしゃいますか?舌はほとんど噛 みませんし、無闇にぐいぐい力まかせに押し込むと、咽に刺さる危険の方が大きくなります。「しっかりして!」とか、 正気に戻すようにぐらぐら身体を揺することも不要な刺激となりいけません。横にして服を緩めて、胸の動きが見えるく らいにしましょう。よく、嘔吐をする子がいますので身体ごと横にしたり、頭だけでも左右どちらかに向け、吐物が咽に 詰らないようにします。

 今は携帯をお持ちの方が多いでしょうから、子供を見ながら、かかりつけ医に電話しましょう。いつごろ電話をするか ですが、約10分を越えて痙攣持続する場合は、途中でも連絡しましょう。何分続いているか?目は閉じているか、どち らを見ているか?手足は力が入っているか、脱力でだらりとしているか?体全体硬直しているか、ビックンビックンとし ているか?などの観察をして、後で医師に詳しく教えられるようにしましょう。

 以上のことを予め頭に入れておいて下さい。知識として持っているのといないのとでも随分違います。私も、学会出張 途中の電車で大人の痙攣発作に遭遇したことがあり、大人のスケールでの痙攣にびっくりして、思わず「大丈夫ですか?!」 などと刺激してしまい、はたと今の事を思い出して、対処したことがあります。もちろんその際は、最寄り駅で降ろして、 救急車で他の医者に診てもらいました(診断はてんかんでした)。

 治療:坐薬を使用するのが一般的です。ジアゼパムの坐薬で、解熱作用はありません。痙攣して受診した際にその場で挿入 され、もう1回は8〜12時間後に挿入する指示を受けることが多いでしょう。これで、治療は終了です。あとは、熱の出る 原因を同時に診察してもらって、必要なら薬が出ます。1996年に日本では「熱性痙攣の指導ガイドライン」が出されてい るので、小児科医はこれを参考にしているはずです。

 次いで、熱性痙攣に関しての相談や心配ごとで覚えておいて頂きたいことを挙げておきます。

 熱性痙攣を経験した子は解熱剤を使用してはいけないのか?答えはNoです。元々解熱剤は使わないことに越したことは ないのは既にお話しましたが、子供が熱でぐったりしているのを管理する目的なら問題ありません。

 解熱剤を使用して急に熱が下がった時にひきつける危険があるので使用してはいけない。これもNoです。まず、急激には 下げない程度の解熱剤を使用すべきです。熱性痙攣は発熱していればいつでも(もちろん、熱の上がりかけが一番確率が高い のですが)生じる可能性があるので、解熱時にも起こり得ます。

 熱性痙攣を一度経験した子供は、以後発熱時に予防をしなければならないか?これもNo。1〜3歳で、数分の痙攣で年に 2回以内であれば予防する必要はありません。それ以外の該当する子はかかりつけ医に確認しておきましょう。

 予防する必要がある御両親に気休めではありますが一言。子供の発熱はいつ起こるか分かりませんね。両親がぐっすいりお休 みの真夜中に急に出て、朝起きて初めて気付くこともありましょう。もしどうしても発熱の始まりを捕らえなければならないな ら、子供の予後が変わるのなら、その子供は以後2年は寝ずの観察を親に強いる必要がありましょうが、実際はそんな指示はな いはず。痙攣はその都度、消耗することは確実であり、熱に気付いたら指示のごとく坐薬を使用して、最小限の消耗に止めるべ き位に考えておきましょう。

 さて、今回で私の使命は終了です。この一年間ありがとうございました。12ヶ月分を(なければ、田村クリニックのホーム ページに掲載中)もう一度、二度読み起こして下されば幸いです。今後のお子様の健やかなる成長を楽しみにしております。 また会う日まで。

平成15年9月

 


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