劇症肝炎
     
 
 先月は、肝臓病の中でも最も一般的なウィルス性肝炎を取り上げましたが、今回は最も恐ろしい肝臓病である劇症肝炎について述べたいと思います。

 劇症肝炎とは、急性肝炎が急激に悪化し、あっという間に肝細胞が全滅してしまう病気で、治療しなければ死亡率100%、大病院の集中治療室で全力で治療しても3人に1人しか助かりません。現在日本では、年間約1000人の方が劇症肝炎を発症しているといわれています。

 劇症肝炎は、初めは一般的な急性肝炎として始まります。急性肝炎はある時点でピークに達し、その後は時間と共に軽快していくのが一般的な経過です。しかし炎症が悪化の一途をたどり、肝性脳症という意識障害と、全身の出血傾向が出てきたら、これが劇症肝炎のサインです。

 劇症肝炎になってしまったら、直ちに血液浄化療法という特別な治療を行う必要があり、一般の病院では十分な対応が出来ないため、一刻も早く専門家と専門装備のある大病院へ搬送する必要があります。それでも救命率は三分の一である為、最近では肝移植が行われるようになりました。日本での肝移植による救命率は約三分の二で、現時点では肝移植が最も救命率が高い治療法となっています。

 ではどのようにしたら急性肝炎の劇症化が予防できるのでしょうか。残念ながら現在は、「この治療をしておけば、劇症化は阻止できる」という予防策はありません。しかし実際に劇症化した例を調べると、A型肝炎とC型肝炎は非常に稀で、ウィルス性肝炎ではB型と、A・B・C以外のウイルスによる肝炎が多く、他に非ウィルス性肝炎と薬剤性の急性肝障害が多いといわれています。

 以前は最も多かったB型肝炎からの劇症化が減少しているのは確実です。これは、B型肝炎の母親から生まれた新生児に、ワクチンを接種することによる母子感染の予防策が効果をあげているためです。

平成13年5月

 


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