胃潰瘍は、以前は体質による慢性疾患と言われ、長期間、薬を服用し続けないといけない病気とされていました。
しかしここ15年間の研究で、胃潰瘍と十二指腸潰瘍は、その大半がピロリ菌という細菌が粘膜に感染することにより引き起こされたものであることが判明しました。
ピロリ菌は、らせん状の形をした細菌で、その形のため、正式名称は、ヘリコバクターピロリと言います。この細菌が粘膜に感染すると、粘膜は胃酸に対してもろくなり、潰瘍が出来やすくなってしまいます。胃潰瘍は、胃酸が粘膜を荒らして出来るという昔からの考えは正しく、従来からの強力な胃酸抑制剤による治療法は今でも大変有効ですが、ピロリ菌を薬で駆除して胃潰瘍を治してしまおうという、新しい治療法(除菌療法)が生まれました。この新しい除菌療法は、3種類の薬を、一日に2回ずつ一週間服用するという簡単なもので、副作用は、下痢、味覚異常などが指摘されています。しかし当院では除菌を行った百例近いケースにおいて、副作用が出現した人は、一割以下でした。今まで慢性的な胃十二指腸潰瘍に悩んでいた人は、ほとんどがピロリ菌感染者ですから、この除菌療法は、福音となると思われます。
ピロリ菌は、胃十二指腸潰瘍だけでなく、胃癌やその素地となる慢性萎縮性胃炎の原因にもなっています。従って胃潰瘍がなくても、ピロリ菌感染者は、すべて除菌すべきであるという考え方も成り立ちます。しかし、日本人全体の約半数がピロリ菌感染者であり、そのうち、胃癌になる人は1%未満ですし、除菌によって、かえって胃炎や逆流性食道炎の症状が悪化し、治りにくくなるケースもあります。従って現在では、ピロリ菌感染者のうち、胃十二指腸潰瘍を繰り返している人に対してのみ、健康保険で、ピロリ菌の除菌を行うことが認められています。
平成14年3月 |