昨今、医師の不正についての報道が新聞などを賑わせておりますが、今回は医師としての密かな喜びについて話をしたいと思います。
僕は大学を卒業後、幸運なことに難関をくぐりぬけて、都内のM記念病院に内科研修医として採用されました。2年間の内科研修終了後、循環器内科医としてのトレーニングを始めましたが、狭心症や心筋梗塞、心臓弁膜症といった患者を相手に心臓カテーテル検査を殆ど毎日のように行い、また入院主治医として、忙しい数年間を過ごしました。同時に循環器疾患以外の様々な疾患の診断と治療についても専門医の指導を受けながら数多く学ばせていただきました。専攻したカテーテル治療は、特殊な器具を用いることで患者の体に殆ど傷を付けることなく、狭窄した血管や心臓の弁を拡大する治療法で、外科手術と同等の治療効果が得られます。
従って患者にはこの上なく感謝していただけますし、自ら手を下して治したという実感がありますから、満足感もひとしおです。ただし、ストレスも相当なもので、常に突発的な事体を予想しながら過ごさなくてはならず、試しに治療最中の僕自身の脈拍数を記録してみたら、1時間近くの間、毎分140回を超えておりました。
一方でこうした侵襲的手段によらない、本来の内科医の醍醐味といいますと、いかに正しく判断し、治療に入り、終えるかということです。
つまり、患者の訴えと診察結果から疑い得る疾患を考え、検査を行い、確定診断のあと、最終的に病気を治すことです。検査は必要最小限でなくてはならないし、治療も当然、正しい治療法でなくてはなりません。様々な疾患に関し、こうしたことを手際よく出来るようになることが内科専門医としての面目躍如と思います。
最初に密やかな喜びと題した理由については、既にお気づきのこととは思いますが、患者の苦痛を速やかに癒すこと、それがすなわち我々の努めであり、今回お話したことは時に自己満足の類であるからです。
では、また。
平成13年9月
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