|
| |



|
従来より上部消化管(食道・胃・十二指腸)のスクリーニング検査は、バリウムX線造影による方法が主体をなしてきました。近年では胃カメラ(内視鏡検査)の普及にともない、実地医家ならびに地域の基幹病院においても内視鏡検査を第一選択とする施設が増加しています。
スクリーニング検査では多くの場合、大きな異常はなく、病変があったとしても早期の発見となります。それであれば検査は楽な方が良い。直接胃の中を観察できる内視鏡検査は有効ですが、従来の口から内視鏡をいれる検査方法では、のどの奥の舌の付け根(舌根)にスコープが触れ「咽頭反射」による吐き気を催すなど苦痛を感じる患者様が多く、「胃カメラは辛いもの」との先入観が強くあり、多くの患者様より「もう少し楽にならないか」との根強い要望がございました。
このような、今まで内視鏡検査を受けたくてもためらっていた患者様に対して「楽な内視鏡検査」を受けていただくため、私どもの施設ではフジノン東芝ESシステムが開発した極細径タイプの上部消化管用スコープを導入しております。通常の上部消化管用スコープに必要な機能をすべて兼ね備え、より患者様負担の少ない経鼻からの胃内視鏡検査が可能です。
このスコープを使用した検査のメリットは、鼻から挿入された内視鏡は、鼻腔を通って食道に入って行くため舌根に触れることがないので「嘔吐感がほとんどない」こと「検査中に会話ができる」ことから、患者様はモニターに映し出される自分の胃の映像を見ながら、医師にその場で質問ができ、医師とのコミュニケーションが可能なため、患者様の心の負担も軽減できることです。これらのメリットにより従来より安全に検査を施行できることが最大のメリットでしょう。
私どもの施設では、今後も経鼻内視鏡をはじめ地域住民の皆様に、安全で最新の医療をご紹介、堤供していきたいと考えております。
|

|
今、この文章をお読みになっていらっしゃる読者の方々の中にも、検診やその他で、便潜血反応(免疫便潜血反応)の検査をお受けになられた方は多いと思います。お医者さんから「陰性でした、大丈夫ですよ」と言われて、何のための検査かもわからずに、病院を後にした人も多いのではないでしょうか? そもそも便潜血検査とは何か? それは、読んで字のごとく、便中に潜んだ微量な血液を検出する検査です。便中の血液で何を探しているのか?と言うと「大腸癌」です。便潜血検査は、大腸癌のスクリーニング検査として確立した検査なのです。
では、どんな大腸癌を見つけることができるのか? 一言、「進行大腸癌」です。2回の便潜血検査で、ほとんどの進行大腸癌がスクリーニングできます。「進行」と聞いて驚かれた方も多いと思いますが、大腸癌の場合、進行癌で発見されても手術が可能で、命が助かる可能性が比較的高いという論理的背景があり、「大腸癌での死亡を減らす」という点では、大変意義のある検査なのです。
このことを踏まえ、今回のお話で皆さんに一番伝えたいことは何かというと、「便潜血検査が1回でも陽性の反応が出たら、必ず精密検査、できれば大腸内視鏡検査を受けてください」ということです。なぜなら「進行大腸癌」がある可能性があるからです。よく耳にするのですが、便潜血検査を再施行して、陰性だから検査を受けなくても良いなどと考えるのは誤った考え方です。少なくとも大腸癌で手遅れにならないためにも、1回でも便潜血検査が陽性でしたら、精密検査を受けることが肝要です。
私共の施設でも、積極的に大腸の精密検査に取り組んでおります。何か気になる点がございましたら、些細なことでもご相談いただければ、真摯に対応させていただきます。微力ながら、地域の皆様の健康維持に尽力できれば幸甚です。
|

|
『もしもししんぶん』の読者の方の中にも、「胸やけ」、「食欲がない」、「腹部膨満感(胃もたれ)」、「腹痛」などの症状で、病院に行ってはみたものの、検査をしても何も異状が見つからなかったという人が、少なからずいらしゃるのではないでしょうか?
「一体私は何の病気なんだろう?」「体のどこかに癌があるんじゃないか?」「なんで先生はもっと調べてくれないんだ?」「病は気からなんていわれたけど、大丈夫?」などと心配され、心を悩ませた挙げ句、より一層胃が痛くなってしまうなんて悲劇ですね。
「機能性ディスペプシア(FD)」という病気をご存知でしょうか? 欧米ではその疾患概念が確立しているFDですが、本邦での知名度は今ひとつ。その正体はというと、「慢性・反復性に上腹部消化器症状を訴えるものの、内視鏡検査や生化学検査によっても異状が認められない病態」ということになります。本邦では、FDは慢性胃炎として包括され、病理組織学的な用語である慢性胃炎の診断名で治療されているのが現実です。
FDは4つの型に分類できます。(1)運動不全型:胃の蠕動(ぜんどう)運動が低下しているタイプで最も多く、すぐに満腹感を感じ、膨張感、腹部のむかつきなどで、食欲が振るわない。(2)潰瘍症状型:潰瘍はないのに、みぞおちに重い痛みなどの、胃潰瘍に似た症状が出る。(3)逆流型:胸やけ、胃酸が上がってくるなどの症状を認める。(4)特発性(非特異型):いくつかのタイプが複合している。以上の4つのタイプがあり、?では、食事の後すぐに膨満感が生じる方なら、胃適応性弛緩反応の不全が、また食後に持続した膨満感が生じる方なら、胃排出能の低下が原因とされます。前者には運動機能改善薬が、後者には一酸化窒素(NO)を誘導するような漢方薬が有効なことがあります。(2)と(3)では、胃酸を分泌する壁細胞プロトンポンプの阻害剤や消化管運動機能改善薬が有効です。
また、FDは心身症としての側面から、抗不安薬や抗うつ剤が有用な場合が多いので、診察時にご相談ください。私は、FDは医者と患者様の二人三脚で治療していく病気だと思っております。もし、「FDかな?」と思われた方がいらっしゃいましたら、まずはご相談ください。
|

|
「何週間も下痢や便秘が続いている」、「急に下痢でお腹が痛くなり、トイレに駆け込むことがよくある」、「下痢と便秘を交互に繰り返す」、「排便すると腹痛がやわらぐ」、「排便後、残便感がある」、「よく腹痛や腹部膨満感に悩まされる」、「便秘がちでウサギの糞のようなコロコロした便がでる」、この中に当てはまる項目が3つ以上ある場合、過敏性腸症候群(IBS)である可能性があります。
IBSは、私が以前に紹介した「機能性ディスペプシア(FD)」とよく似た病気ですが、FDが上腹部症状を主体とした病態に比し、IBSは下腹部の症状を主体としている点が大きな違いでしょう。IBSは、腹痛や腹部の不快感などの症状を伴う下痢や便秘が続く病気で、X線検査や内視鏡検査をしてもはっきりした異常は見つかりません。精神的なストレスなどが誘因となり、胃腸の働きに異常をきたした結果発症します。一般の人の約20%がこの病気に悩まされており、ストレス社会である現代にますます増えている病気の一つです。
診断は除外診断になりますから、まずは専門家の診察を受け、癌や炎症性腸疾患などの器質的異常がないことを確認することが重要です。「IBSと言われていたけど、実は癌があった」などということがあってはいけないのです。
診断がついたら治療です。(1)ライフスタイルを改善しましょう。規則正しい生活、これは全ての病気に重要なことです。(2)ストレス解消法を見つけましょう。これは難しいでしょうが、重篤な病気ではないので、気持ちを楽に持ちましょう。(3)下痢の患者さんは、刺激の多い食べ物は避けましょう。乳製品、アルコールなどは症状を悪化させることがあります。(4)便秘の患者さんは、水分と食物繊維をたくさんとるようにしましょう。刺激性の下痢は好ましくありません。(5)病院でもらった薬をきちんと飲みましょう。通常は、胃腸の働きを調節する薬、ちょうどよい便を作るのを助ける薬などが処方されます。場合によっては、安定剤や漢方薬などが効果がある場合もあります。IBSかな?と思ったら、いつでもご相談ください。
|
 |

|
みなさん、脂肪肝はご存知でしょうか? 多くの方が一度は耳にした病気だと思います。肝臓に中性脂肪がたまった状態を脂肪肝といいます。この記事を読んでいらっしゃる方の中にも、脂肪肝と診断され、そのまま放置されている方が少なくないのではないでしょうか? 確かに脂肪肝は、これまで肝硬変や肝癌には進まない良性の疾患と考えられてきました。しかしながら、最近の研究で脂肪肝でも肝炎に発展し、肝硬変から肝癌へ進行する病態があることがわかってきました。
お酒をあまり飲まないのに、肝臓がアルコール性肝炎と同じように炎症を起こした状態になる病気、この病気が「NASH(nonalcoholicsteatohepatitis・非アルコール性脂肪肝炎)」です。NASHは飲酒者にみられる肝臓病と同様の特徴があります。ただ一点違うのは、アルコールが原因ではないということです。NASHがなぜ起こるのか? 脂肪肝に別の要因が加わって発症すると言われており、その要因は、インシュリン抵抗性、活性酸素、サイトカインなど、これらの複合した要因が考えられています。しかしながら明らかなメカニズムは解明されていません。日本では成人の3〜4人に1人が脂肪肝で、その数は、200万人、そのうちの70万〜80万人がNASHであると考えられています。この人達が、肝硬変、肝癌のリスクを抱えています。ですから、私達も意識して治療に当たる必要があるわけです。特に30代以降の男性に多く、女性の場合は、閉経を迎える年代に多いといわれています。
どのように診断するかというと、血液検査、超音波検査が主体となりますが、確定診断には肝臓の組織を採取する肝生検が必要です。肝生検は非常に侵襲的な検査ですので、全ての人に行うのは現実的ではありません。そこで、まずは脂肪肝の治療を開始するのが一般的でしょう。それは、生活習慣の改善です。生活習慣病を合併している方は、生活習慣病の治療を優先して行う必要があります。
NASHは新しく認められてきた疾患概念で、NASHの特別な治療薬はありません今後はインシュリンの抵抗性改善薬などが、治療薬として認められていく可能性が考えられます。治療の基本は生活習慣の改善を含めた総合的な治療です。それに併せて肝機能の改善を目的とした種々の治療を加えることで、肝硬変への進展を予防し、肝癌 発症を抑制することが治療の主体となっています。NASHかな?と思ったらご相談下さい。専門性を持った家庭医として皆様にアドバイスできれば幸甚です。
|
 |

|
先日の厚生労働省の発表で、ヘリコバクター・ピロリ菌(以下Hp)の保菌者の胃がん発生率が、健常者の5倍という非常にインパクトのある研究結果がマスメディアを賑わしていたのは記憶に新しいところです。折しもHpの発見者であるオーストラリアのマーシャル博士のノーベル医学生理学賞受賞の報があって、Hpの認知度が上がっていた矢先でもあり、心配される患者様からのご相談を多数受けました。
この研究の具体的な内容の一つが、「Hp抗体(以下HpAb)陽性者の胃がんリスクは、陰性者の5.1倍である」というものです。5倍といえばかなり高い相対リスクですが、どれくらいの頻度かといえば、10万人当たり1年間で概算すると、約7万5千人のHpAb陽性者から75人(0.1%)が胃がんになったのに対し、約2万5千人のHpAb陰性者からは5人(0.02%)が胃がんになったことになります。この結果を多いととるのか、そうでもないととるのか、これは個々で意見の分かれるところだと思います 。
恐らく読者のみなさんが最も気になるのは、「Hp感染で胃がんリスクが高くなるのならば、除菌による胃がん予防効果があるのかどうか?」という点でしょう。現状では、除菌で胃がん予防が可能という確実な証拠が揃っているとは言えません。さらに、薬による副作用や他の病気への影響、効果が期待できる時期など、未解決の問題も多いのが現状です。
今回の対象者は2006年現在56歳以上の集団ですが、そのほとんどがHpに感染したことがあるという結果でした。感染者の胃がん相対リスクがかなり高くなるにしても、そのうち実際に胃がんになる頻度はわずかです。今後、臨床試験によって除菌による胃がん予防効果の確実な結果が出るまでは、まず、高塩分や喫煙、野菜・果物不足など胃がんリスクを高くするような生活習慣を改善し、その上で、胃粘膜萎縮が指摘された方は、定期的な胃がん検診を受けることをお勧めします。
なんでもかんでも除菌すればよいというものでもありません。現在除菌治療が積極的に勧められる疾患は、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、専門施設でのH.pylori除菌治療が勧められる疾患は、低悪性度胃MALTリンパ腫です。胃がんに対する内視鏡的粘膜切除術後胃および胃がん術後残胃、過形成性ポリープ、慢性萎縮性胃炎、non-ulcer dyspepsia(NUD)などは除菌の意義が検討されているところです。患者様個々の病態を判断して考えなければならない問題です。Hpの有無だけで一喜一憂してはいけないのです。まずは専門家にご相談ください。
|

|
今回は、以前にお話しした「NASH」に関連する話題です。NASHは、アルコールも飲まないのに肝臓に脂肪が蓄積してしまう怖い病気です。なぜ肝臓に脂肪が貯まるのでしょう? この疑問に答える重要なキー・ワードが「メタボリックシンドローム」なのです。
死の四重奏という言葉を聞いたことがあるでしょうか? 肥満+高脂血症+高血糖+高血圧、この状態が死の四重奏です。国が保健指導や潜在性心血管疾患診断のための検査費用を負担しても治療する必要があると考える高危険状態です。この死の四重奏を奏でる序章がメタボリックシンドロームということになります。
話題の疾患ですから、メディアで頻繁に紹介されることも多いので、厳密な診断基準については割愛いたしますが、簡単に申し上げると、ウエストが、男性85cm以上、女性90cm以上、これに加えて高脂血症や高血圧、あるいは高血糖のどれか2つ以上を合併した状態ということになります。日本人は、遺伝素因の特徴として内臓脂肪を蓄積しやすい民族であることがわかってきて、メタボリックシンドロームが注目されるようになった経緯があります。
メタボリックシンドロームで重要なキー・ワードは肥満であり、その肥満の背景にあるのが脂肪の蓄積、ことに内臓脂肪の蓄積ということになります。脂肪組織からはアディポサイトカインという生理活性物質が分泌されていて、肥満があるとアディポサイトカインの分泌調節異常が生じ、インスリン抵抗性をはじめとする、種々の病態が形成されるわけです。
消化器病に関していうと、最初に述べたNASHでは、レプチンというアディポサイトカインが重要で、NASHの患者ではこのレプチンが高値でありこのレプチンによる肝脂肪化の抑制機構に障害があることなどが示唆されています。また、このメカニズムがC型慢性肝炎など他の病因による慢性肝疾患の進行や治療効果に影響を及ぼすことも明らかになりつつあります。
|
 |

|
この季節、なかなか咳が治らずに困っている方が多いと思います。私の外来診察室にも、多くの患者様が咳の症状を訴えられて受診されます。多くはかぜ症状の遷延で、気管、気管支の炎症に伴う気道過敏が原因であることがほとんどです。しかしながら、稀にそうでない患者様がいらっしゃいます。かぜの咳は1〜2週間で改善されるのが普通です。慢性咳嗽の定義は、少なくとも3〜8週間持続する咳ですから、3週間以上持続すれば慢性咳嗽ということになります。かぜで8週間の咳など稀なことです。皆さんの中にも、なかなか咳が治らずに、慢性気管支炎などと診断され、鎮咳薬、殊に中枢性鎮咳薬を漫然と処方されている方がいらっしゃるのではないでしょうか? 効果のない薬を続けて飲むことほど、体と懐に悪いことはありません。
咳が続くと、皆さんがよく頭に思い浮べるのが、肺癌と結核です。残念ながら両疾患とも、さほど頻度の高い疾患ではありません。日本での慢性咳嗽の三大疾患は副鼻腔気管支症候群、アトピー咳嗽、咳喘息です。ところで欧米ではどうでしょう? 欧米では後鼻漏症候群、気管支喘息、逆流性食道炎ということになっているのです。後鼻漏症候群は、副鼻腔気管支症候群+アトピー咳嗽と考えていただいて結構です。
逆流性食道炎? おかしいですね。「消化器の病気ではないの?」とお思いになる方も多いでしょう。そう、もちろん消化器の病気です。その消化器の病気である「逆流性食道炎」が欧米では慢性咳嗽の三大疾患の一つなのです。これは人種差なのか? いや、そうではありません。日本人の逆流性食道炎の患者様だけ咳嗽の合併が少ないわけではありません。咳の症状よりも、胸焼けなど、消化器症状の強い患者様が多く、統計に入ってこないのではないかと考えられています。
逆流性食道炎による慢性咳嗽の診断基準は、治療前診断基準で、(1)慢性咳嗽 (2)胸焼け、呑酸などの胃食道逆流を疑う上部消化器症状 (3)上部消化管内視鏡検査で、食道裂孔ヘルニアまたは逆流性食道炎の所見がある、あるいは、食道透視で、バリウムが中部食道以上に逆転する、です。治療後診断基準では、胃食道逆流に対する治療(PPI、H2-Blocker、シサプリドなど)にて咳嗽が軽快すること、咳嗽軽快までには、比較的時間(2週間以上)を要することがあるので、慎重に様子を診ていくこと、となっています。しかしながら消化器症状がなくとも、胃液の胃・食道逆流があり、咳嗽感受性が亢進して咳が出ている可能性も十分に考えられます。そのような方々にも、逆流性食道炎の治療薬である、プロトンポンプ阻害剤(PPI)が奏功するかもしれません。一つの治療で、胸焼けと咳の二つの悩みが解決する、素晴らしいことではないですか?
なかなかよくならない慢性の咳でお悩みの方、逆流性食道炎かもしれません。まずは、ご相談ください。
|
 |

|
「カプセル内視鏡」、多くの方はこの言葉を耳にされたことがあるのではないでしょうか? カプセル内視鏡と聞くと、非常に先進的で「夢の検査」と言ったイメージが浮かぶのではないでしょうか? ところが、イメージばかりが先行し、具体的な情報が少なく、「どんな検査なのか?」「どこで検査が受けられるのか?」と言った疑問に答えられる方は、少ないのが現状ではないでしょうか?
そもそもこのカプセル内視鏡、何のための検査なのでしょうか? ズバリ、小腸を診るための検査なのです。小腸は、栄養の吸収はもとより、免疫の維持にも関わる重要な臓器です。それにも関わらず、全小腸を直接観察することは不可能と言って良いほど非常に困難なことでした。そこで登場したのが、イスラエルのGIVEN Imaging社が開発し、実用化に成功したカプセル内視鏡というわけです。このカプセル内視鏡の出現で、全小腸の内視鏡画像的観察が可能となり、これまで全世界で30万件以上の検査が実施されてきました。特に、従来の内視鏡検査では原因を特定できなかった消化管出血の診断においては、その有用性が数多く報告されています。そもそも国外で実用化された検査ですので、症例や報告の多くは諸外国のものが大半であるのが現状です。しかし、皆さんにとって重要なことは、「我が国の現状に目を向けるとどうなるのか?」ということではないでしょうか?
本邦では、冒頭に述べたように、まだまだ皆さんのイメージだけが先行している検査で、保険が適応されるような検査でもありません。現状は、認可申請中で、一般病院で検査を受けることはできず、大学病院などのごく限られた施設で、限られた症例に対して検査が行われているのが実情です。
どのような症例が検査の適応になるかというと、国内の研究会の報告では、「原因不明の消化管出血」「狭窄を伴わない炎症性腸疾患」「消化管ポリポーシス」「吸収不良症候群」「淡白漏出性胃腸症」「非ステロイド性消炎解熱鎮痛薬による小腸粘膜障害の評価」「他の検査で腫瘍などの小腸疾患が疑われる場合」と言われています。逆に検査を行わない方が良いとされる、相対的禁忌あるいは禁忌は、「ペースメーカー埋め込み患者」「消化管狭窄」「消化管の瘻孔」「嚥下障害がある場合」「消化管運動機の障害」「放射線性小腸炎」「妊婦」「腸閉塞」「滞留時にカプセルの回収を拒否する場合」と言うことになっています。このように我が国では、どんな方でも受けられる検査ではありません。
皆さんのイメージにもあるように、カプセル内視鏡はカプセルを飲み込むだけです。患者様への負担が少なく、小腸疾患のサーベイランスには最適な検査でしょう。しかしながら、その一方では問題点もございます。胃腸の動きが悪い患者様では、その通過に時間がかかり小腸を撮影できないことがあります。出血の可能性が認められても、直接の止血や組織の採取ができず、他の検査の施行や再検査が必要になることがあります。また画像の読影に時間がかかるということと、診断精度が読影者の経験にかなり左右されると言った問題点もあります。このように我が国では諸問題もまだまだあり、敷居の高い検査となっていますが、将来的には技術の進歩で広く普及していく検査になるかもしれません。負担の少ない検査は、医師にとっても患者様にとっても歓迎すべき検査です。まだ私どもの施設で施行できる検査ではございませんが、施行できる日もそう遠くはないかもしれません。
次回は内視鏡で全小腸を観察できる「ダブルバルーン小腸内視鏡」の話です。カプセル内視鏡との比較も交えながらお話ししたいと思います。医療は日進月歩です。お困りのことがあれば、まずはご相談ください。
|
 |

|
皆さんの周りで小腸の病気の方はいらっしゃいますか? 恐らくそう多くはないでしょう。せいぜい十二指腸潰瘍くらいではないでしょうか?
これまで医療の現場では「小腸に病気は少ない」というのが定説でした。その大きな理由としては「小腸全域を検査する手段がなかった」ということが第一に挙げられます。正確に言えば、小腸透視などの検査は存在したのですが、その診断の精度は決して高いものではありませんでした。その闇に光を当てたのが、前回お話ししたカプセル内視鏡であり、今回の話の中心になるダブルバルーン小腸内視鏡(DBE)なのです。カプセル内視鏡はもともとが海外で開発され、実用化された検査ですが、今回紹介するDBEは日本で開発された検査手技であり、カプセル内視鏡に先んじて保険診療の適応も認められた検査です。
DBEがカプセル内視鏡より優れる点は多々ございますが、やはり自由に病変を観察し、組織の採取や治療ができるという点は大きなメリットでしょう。検査の詳細をこの紙面で説明することは難しいのですが、長い内視鏡と、その内視鏡の外側の筒で構成された検査機器で、内視鏡の先端と、外側の筒の先端に風船が付いていて、二つの風船を膨らませたり縮ませたりしながらカメラと筒を操作して、腸をアコーディオンのように畳ませながら全小腸を観察することができる検査です。私も大学病院勤務時代にはDBEで様々な小腸病変を経験いたしました。そして、これらの検査手技を通じて、小腸には意外と病気があるのではないかという印象を最近では持つようになりました。
それではどのような病変が観察されるのでしょうか? 大きく分けると、潰瘍性病変とポリープを含む腫瘍性病変になります。殊に潰瘍性病変は多く認められるもので、皆さんもバファリンなどの消炎解熱鎮痛剤が胃を荒らすことはご存知な方が多いと思うのですが、これは小腸にも言えることなのです。小腸潰瘍性病変の多くが消炎解熱鎮痛剤によるものであり、その頻度も高いのです。鎮痛剤も注意して使用しないと、小腸で大出血などということになりかねません。腫瘍性病変では癌や粘膜下腫瘍の診断率が高いようです。
DBEは基本的には入院が必要で、決して楽な検査ではありませんし、検査機器も高額です。術者の経験も必要で、広く普及している検査とは言えません。保険が適応されるとは言えまだまだ一部の高度医療機関のみで行われているのが現実でしょう。
それではどのような経緯で皆さんが検査をお受けになられるのか聞きたくなりますよね。その多くは出血です。DBEの最大の適応は、原因不明の消化管出血です。私自身も、数年来の繰り返す吐下血と貧血に悩んでいた患者様にDBEを施行しメッケル憩室を診断、手術を行い軽快した症例を経験しております。従来の内視鏡検査では同定できなかった原因不明消化管出血でお悩みの患者様がいらっしゃれば、ぜひご相談ください。当院では施行することはできませんが、検査可能な医療機関をご紹介させていただきます。様々な医療機関と連携をとり、患者様にベストな医療の選択肢を提示するのも、クリニック診療の重要な責務と考えております。
|
 |

|
最近、テレビを見ていると、大腸の検査を推奨するCMが多くなりました。また番組内でも、大腸がんの危険を訴えて、大腸検査の重要性を強調することが多くなったと感じるのは、私だけでしょうか? 私のところへも、テレビ番組を見て心配になり、大腸内視鏡検査を希望してやって来る患者様を時々お見受けします。このことにはどのような背景があるのでしょうか? 今回は最近、目や耳にする機会の多くなった大腸がんについてお話ししてみたいと思います。
大腸がんは年々増加しており、2004年の年齢調整死亡率において、癌の部位別順位で男性4位、女性ではなんと第1位を占める重大な病気となっています。男女の合計では罹患数が2位、死亡数が3位ですが、近い将来、肺がん、胃がんを抜いて第1位になることが予想されています。
大腸といっても長い臓器ですから、大腸がんという呼称は「結腸がん」「直腸がん」「肛門がん」を総称したものです。その中で、右側(肛門から遠い)の大腸がんが増えています。
大腸がんは、検診によって早期発見できればほぼ完治できる病気です。しかし、現在の日本人全体の検診受診率は約18%台と低迷しています。初期の段階にはほとんど自覚症状がないことも、大腸がんの早期発見を遅らせる原因となっています。
これらのことを背景に、財団法人日本対がん協会の後援で、内視鏡の製造メーカーであるオリンパスメディカルシステムズ(株)による「“BRAVE CIRCLE”大腸がん撲滅キャンペーン」が展開され、マスメディアで大腸がんについて取り上げられる機会が多くなっているという現状がある訳です。
私も日々の診療で内視鏡検査に従事しており、一日としてカメラを握らないという日はございません。これは私見ですが、上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)・下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ)をしていて、件数の多い胃カメラに比較して件数の少ない大腸カメラですが、がんが見つかる機会は大腸の方が多いという印象を持っています。このことは、大腸カメラは検査の敷居が高く、症状が高度な人が検査を受けることが多いといった背景もあるかと思いますが、それを鑑みても「大腸がんは増えているな」という印象を持っています。
また年齢も多様で、大腸がんの場合、若いからといって安心してはいられません 20代の症例も経験しておりますし、下血などのサインがあったら迷わず検査を受けることをお勧めします。以前にお話しした便潜血検査も万能ではございません。基本的には進行大腸がんのスクリーニング検査です。前がん病変のポリープあるいは大腸がんの早期発見のためにも、40歳を過ぎて危険因子のある人は一度は大腸検査、できれば大腸カメラを受けていただくことを私からもお勧めいたします。
それでは、どんなことが危険因子なのでしょうか? 大腸がんは、宿主要因として一部に遺伝性のもの、炎症性腸疾患を背景に持つものがありますが、一般的には環境因子が重要とされています。その環境因子としての危険因子が、牛や豚など赤身肉や加工した肉食品の摂取量の多い人、過体重、肥満、アルコールの摂取などです。心当たりのある人も多いのではないでしょうか?
危険因子だけを話しても不安をあおるだけですから、予防因子についてお話ししておきます。皆さんも感覚的にはわかっていると思うのですが、運動と野菜の摂取が重要と言われています。食物繊維が重要という印象を多くの方がお持ちかと思いますが、その研究結果は、一致した結果を得るに至っておりません。
お話ししたような危険因子・予防因子に留意し、大腸がんに罹らないことが基本です。しかしながら病気は待ってはくれません。少しでも不安があればとにかく受診していただき、納得のいく検査を受けていただく事が肝要でしょう。
|
|